ケンコーミサトっ子の効果

ケンコーミサトっ子を履く効果とは?

全国の保育園や幼稚園、小学校で採用されるケンコーミサトっ子。

ケンコーミサトっ子は、足の指の力が弱い、土踏まずの未形成、外反母趾など足の悩みを解消するために考案されました。

ケンコーミサトっ子を日常的に履くことによって、実際、子ども足の発育にどのような効果があるのか、兵庫教育大学名誉教授の原田碩三先生に解説していただきました。

趾(足の指)を使わないと動けないミサトっ子の効果を調べてみよう!

土踏まずが趾を使うとできる( 図1)ことは、本などにたくさんかいたが、草履をはいてわかったミサトっ子の効果を、かんたんにガッテンしてもらうために、ミサトっ子をはいたときとほぼ同じ動きの趾のまげのばし運動で調べよう。

図1 草履ばぎ6か月と土踏まずの形成
図1 草履ばぎ6か月と土踏まずの形成

① 土踏まずができる実験

草履は短い前緒を母趾と第二趾ではさまないと動けないが、趾は草履をはいて歩くとすべてがまがる。長い横緒は動くとき、テコの役目をして趾がそるのを助ける。つまりミサトっ子をはいて動くと、すべての趾がまげのばし運動をくりかえす。そこで、①足長計で足長をはかる。草履の前緒をはさむ動きによくにた②両足の趾を同時にまげてすすむ芋虫歩き(図2)を20回する。③正座の趾を立てた跪座(図3)で、体をねじり趾のそりを強くして、5つかぞえて、2往復する。④ふたたび足長をはかると、足のうらのアーチがあがるので足長が短くなる。つまり、半年間草履をはいた子の土踏まずと同じになった(図1)。差があった左右の足長も、長いほうがより短くなってほぼ同じになる。

ミサトっ子をはいて動くときの趾のまげのばし運動の力はこの実験より弱いが、1分間動くと片足の趾が50回以上ずつくりかえすので、12度くらいの母趾の外反が直り(図4)、とくに母趾と小趾の力が強くなって(図5)横にころぶのをふせぐ。生まれつきほぼきまっている足の形も、重心が趾先にちかくなって、逆三角形型の直立姿勢をよくする(図6)。姿勢がいい子は、横から見ると鼻と胸が同じ位置にならんでおり、脳がイキイキと働くが、通園も外あそびもミサトっ子をはいている子の姿勢はいい。これをはいて活発に群れてあそんでいる子は腰も立っている。

図2 芋虫歩きで20歩進む
図2 芋虫歩きで20歩進む
図3 跪座(後ろを向いてゆっくり5つ数えて趾に力をかける)
図3 跪座(後ろを向いてゆっくり5つ数えて趾に力をかける)

図4 草履ばき6か月と母趾内向児の減少
図4 草履ばき6か月と母趾内向児の減少
図5 1年間の草履ばき児とくつばき児の趾の力
図5 1年間の草履ばき児とくつばき児の趾の力

図6 くつをはいている子は運動能力が低い子の足、草履をはいている子は運動能力の高い子の足と類似
図6 くつをはいている子は運動能力が低い子の足、草履をはいている子は運動能力の高い子の足と類似

② 体力・運動能力・計算能力などがよくなる実験

ミサトっ子をはいた子は、筋力や体前屈、反復横跳、片足立ちなどの体力や、短距離走や立ち幅跳び、ボール投げなどの運動能力が高かったが、芋虫歩きと跪座をしたあとは、これらの項目がよくなる(筋力は、握力計がないときはOリングテスト 図7でする)。たし算の数はふえ、まちがいが少なくなる。なお、考える力が弱くなるゲーム脳の原因の電磁波は、携帯電話を体の近くで持つとOリングテストがひらくが、芋虫歩きと跪座のあとはひらかない。テレビゲームをしたあとはしっかりあそぼう。機械を使うと判断力や集中力がよくなることもわかる。

図7 Oリングテスト 親指と薬指でリングを作り、他の人がこれを開く。リングの子は抵抗
図7 Oリングテスト 親指と薬指でリングを作り、他の人がこれを開く。リングの子は抵抗

③ 体のゆがみを直す実験

北半球の人は両手首のいちばん手にちかいしわを合わせて指をのばすと左手が長いが、足や骨盤、躯幹、首、あごなどの左右差が大きすぎる子の行動はおかしい(図8)。体のゆがみは、片方の筋にストレスをかけつづけるだけでなく、胸郭の弾力が弱くなり→胸式呼吸が浅く→すいこむ酸素が少ない→疲れやすくその回復が遅いので→心もみだれやすい。左脚が長いと骨盤も左が高いが、肩ははんたいに右があがる。そして骨盤も肩も高いほうが前に出て、体がねじれるので、図8の影響はさらに大きくなりやすい。体のゆがみも姿勢のようにミサトっ子をはいて動くと直る。われわれはいすにすわって脚をくむときは長い方を上、あぐらや正座をくずした横座りは下にする。しかし、芋虫歩きと跪座のあとは、どちらが上でもへいきだ。大工さんが使う水平器ではかった骨盤の高さの差もなくなっている。

図8 体のゆがみと行動特性
図8 体のゆがみと行動特性

④ 大きい履物は趾が働かない・アオリ歩行ができない

大きすぎる靴の子の母趾の先は上にそるので、足型の母趾が半分しか写らない。趾が1本も地面についていない子(図9)を1999年にみつけたが、浮き趾は2002年頃からすごくふえ、力を出す平爪が巻き爪のようになってきた。これらも大きい靴は趾を使う回数も強さもダメなことが大きな原因で、タコ・マメ・魚の目・趾の変形・母趾の内・外反などの発生率が高いだけでなく、血液が体にまわりにくい、人間だけがするアオリ歩行ではなく、踵の内側から地面について歩くなど、大きな問題がある。こういう子は雨のあとにズボンがよごれるアトバネがある。ミサトっ子も大きすぎる場合は斜めばきになって、効果が半減する。大きすぎる履物ははかないこと・はかせないこと。

図9 全て浮き趾の子(1999年)
図9 全て浮き趾の子(1999年)

土踏まずについて

⑤ 人間も変則四つ足動物

三脚を撮影の時に使うのは、3本の脚の長さが全て違っても、つまり斜面や凸凹がある場所でも、三脚は安定して立つからだ。一般に動物が四足なのは、体が不安定になる移動時に安定する、三脚立ちになるためだ。人間の足の裏には①土踏まずという縦の内側アーチや②小趾側の縦アーチ、③土踏まずの部位の横のアーチ、さらに④趾骨・中足骨アーチが趾のつけ根部位にある。われわれの足の裏は、この①②④のアーチの母趾部・小趾部・踵部の3基点の三脚立ちだから、片足立ちを繰り返す直立二足歩行とアーチ機能による多様な行動ができる(図10・11)。つまり足の裏に三脚構造があるので、二足直立で歩き、走ることができる。とくに、踵から着地し→小趾側で体重を前に移し→母趾側へ足をアオッテ→母趾を中心に2・3趾で地面を押して前進し、長い距離を歩き続けるための人間特有のアオリ足歩行は足の裏にアーチができてからで、土踏まずができていない人は長距離歩行が苦手だ。三脚立ちをする人間の足の形は、足幅が広くて踵幅が狭い逆三角形型だが、これがさらに二足直立を安定させ、直立の二足歩行や多様で素早く巧みな動きを促進する。さらに土踏まずを境に、趾部が前足、踵部が後足の変則四足動物であることが人間の特徴だ。ゆっくり歩くと足の趾部・踵部と趾部、趾部・踵部と踵部の3点が常に着地しているが、これが、われわれも動物と同様に四足動物である証拠だ。

図10 足の測定部位や重心等
図10 足の測定部位や重心等
図11 足の裏に丸天井をつくる足根骨の化骨年齢
図11 足の裏に丸天井をつくる足根骨の化骨年齢

⑥ 土踏まずに代表される足の裏の丸天井の機能

①立位姿勢のバランスを保つ:タンスの一番下に袴のような空間があり、ビンや花瓶なども底の接地面に空間がないと倒れやすい。②強いアーチで支え・趾力の働きを強化する:柱がない体育館の屋根はアーチ型だ・机の上で指を伸ばしたのでは指先に力が入らないが、掌に空間を作ると指力が強くなる。③クッション作用で瞬発力を発揮し・衝撃を和らげる:土踏まずの未形成児は短縄の連続跳びができにくく、とび降りの時に膝を深く曲げる、④趾の巧緻性の促進:土踏まずの部位を両手で強く握ると趾じゃんけんができやすいなど、アーチは二足直立と直立二足移動のすべてに深く関わっている。

⑦ 土踏まずの形成時期

子どもの足の骨の化骨(図11)から考えると就学前だが、この形成率が75%だったために1970年初頭に大きな問題になった。しかし近年の形成率は42%程度で、形成しない子や12歳で形成する子も稀でなく、この間に子どもたちの発達は、身体機能や能力、遺伝的に変わりにくい身体構造だけでなく、情緒的・社会的・知的な面、すなわち、人格のすべてにひずみがみられた(図8)。しかしマスコミは飽きっぽく、親も保育者も、多くの子が同じだと安心して、蔑視し過ぎている。


⑧ 土踏まず未形成児の増加の理由と課題

土踏まずの形成には趾の使用頻度やある程度の負荷が必要だが、趾使用の激減が土踏まずができない主因だ。すなわち今日の子は、路面が整備されて凸凹がないために直立姿勢のバランスを保つ足指捕地力を発揮する機会が少ない。昼間は靴下と靴を常用しているが、これらは趾を締めつけるだけでなく、靴と靴下、靴下と足の間にすべりが生じて四重に趾の働きを阻害している。1歩ごとに静止があるために趾の働きが必要な歩行だけでなく、活発かつ多様な働きで趾を使用する群れ遊びが、地域だけでなく、園や学校でも激減している。

今日の子は、趾ジャンケンや趾で鉛筆を拾えない、登り棒を趾でなく、足の甲ではさんで登るなどと趾の機能が退歩し、趾や足の筋力が弱く、2000年頃から趾力の発揮を促進する平爪が巻き爪の子や趾の変形児、あるいは浮き趾児が増加している。なお第五中足骨骨端部が、フットプリントで黒く写る子の激増は足の筋量現象の示唆だ。

以前の子は地域の異年齢の遊び集団の中で人格を高めた。趾と全身心を使う群れ遊びは、血液の循環を促進して全身に栄養を供給し、交感神経を高めてその後の副交感神経の働きで食欲や睡眠・排便などの生活習慣を良好にし、脳内ホルモンの分泌を変化させて情緒を安定させ、生まれつきある體の歪みを防止・矯正した。人間特有といっても過言でない土踏まずの未形成児の激増は、子どもからの人格の全面的な発達の危惧を知らせるSOSだ。體の土台である足とこれを育てる趾の使用ができるはき物選びを子育ち支援の柱に置いていただきたい。